更新料について5

 前回からの続きで、不動産賃貸借契約における更新料支払いに関する特約条項が無効だとする訴えについて、どの様な結論に至ったか以下に記します。

 平成23年7月15日、建物賃貸借契約における更新料支払特約条項が消費者契約法10条に抵触し無効か或いは有効か、という事案について最高裁判所は記載条項が一定の要件を満たしている場合、事実上「有効」と判示しました。これまで下級審判決において更新料支払い条項の有効性については考え方が分かれていましたが、この判決が確定したことにより漸く決着がついた事になります。

本件更新料支払特約条項を「有効」とした判決の要旨は下記内容の通りです。

「更新料支払特約条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払

を約する条項は、賃貸人と賃借人との間に更新料支払いに関する明確な合意が成立

している場合、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額

に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項

に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらないと

解するのが相当である。」

 つまり、最高裁判所が更新料支払特約条項を有効とするには契約書に更新料支払いの合意だけではなく、更新時いくら支払うのか或いは更新料算出の計算式等が一義的かつ具体的に記載されていることが必須条件であるとすることが確認されたことになります。

 以上のことから弊社では、更新手続きを行う際、土地賃貸借契約書に更新料算出の計算式等を必ず記すこととしています。記載する計算式については「更新について2」をご参照ください。

※この裁判は建物賃貸借契約における更新料について争われたものですが、判決の元となる考え方は、土地賃貸借契約における更新料についても準用するものと考えられています。

 しかし、旧借地法時代から続く土地賃貸借契約書で、更新料支払特約条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された契約書はまず存在しません。多くの契約書は、「所定の更新料を支払うものとする‥」「更新料を支払う事を承諾した‥」等と記載されています。中には、更新料について何も記されていない、或いは契約書の存在自体がはっきりしないこともあります。

 この背景には、旧借地法下の更新料受け渡しについて事実たる慣習(民法92条)や商習慣(商法1条)等の規定を当てはめて実務が行われていたことがあります。事実、昭和49年1月28日、東京地方裁判所において「東京都内においては、建物所有を目的とする土地賃貸借契約において、契約期間が満了して契約の更新が行われる際に、建物の存する場合、特別な事情がない限り、賃借人より賃貸人に対して更新料の名の下に相当額の金員を支払うという慣習が存在しており、かかる慣習は、借地法の法定更新の規定に反するものではない。」という更新料請求の慣習を容認した裁判例が存在します。

 しかし最高裁判所は判決昭和53年1月24日にも「建物所有を目的とする土地賃貸借契約における賃借期間満了に際し賃貸人の一方的な請求に基づき当然に賃借人に賃貸人に対する更新料支払義務を生じさせる事実たる慣習が存在するものとは認められない」とし改めて慣習による法律上の請求権を認めませんでした。従って、現在更新料請求に関する裁判で商習慣や慣習があるというだけの根拠で支払いを求めて争っても、まず勝ち目はないでしょう。 最高裁判所も土地賃貸借契約期間満了時に賃借人から賃貸人に対し更新料を支払う例が少なくないことは承知しているようです。しかし、裁判となれば単に慣習があるということだけで更新料の支払いが容認されるものではありません。契約書を読んだ裁判官が更新料の金額を計算できる(金額が分かる)ようにしておくことが重要です。

2025年9月19日

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